2001年9月16日日曜日

「第56回川崎市定期能」(川崎能楽堂・平成13年9月15日)

能「杜若」
シテ・香川靖嗣
ワキ・宝生欣哉
後見・友枝昭世・長島茂
笛・槻宅聡
小鼓・森沢勇司
大鼓・佃良勝
太鼓・金春国和
地謡・塩津哲生・出雲康雅・大村定・中村邦生・金子敬一郎・大島輝久


「杜若」は3番目物。3番目物のを実演で観るのは「二人静」に続いて 2回目だが、このときのこともあり、自分の能への接し方の問題からか、 果たして3番目ものが楽しめるものかやや不安だったのだが、 結果は全くの杞憂。 成る程、こういう純度の高さというのは能ならではなのだろうと、 3番目物が能の中心にあるのに納得させられた。 前回の「阿漕」同様、最初から最後まで、シテの動きの一つ一つに釘付けに され、退屈することは全くない。杜若が一面に咲く光に満ちた水辺の 風景が、シテの動きにより具体化する。ちょっと魔術的な感じさえ受けた。 そして、風景はシテの外側のものでもあり、また内側の心象でもある。 そしてその透明で純粋な心の状態に見所の私も浸され、心の奥底 から爽やかな気が広がってくるのが感じられた。 香川さんの演じるのを観た2番の満足度はいずれも最高。 今後も機会があれば是非観てみたいと思う。